新素材ロープとして、1980年代から、炭素繊維に着目し、
エポキシ樹脂との複合材のケーブル:CFCC®を開発し、土木や送電線向けに展開しています。
炭素繊維(CF)等に適切な撚り率を与え、ポリエステル糸の被覆層で、
充填度の高い複合体とし、その構成を1×7として、PC鋼撚り線や亜鉛めっき鋼撚り線より、
軽く、錆なく、長寿命の補強材となり、その劣化モード確認やTg付近での
アレニウスプロットによる寿命推定など進めています。
また、高配向性のアラミド繊維を用いた軽量、高強度な繊維ロープでは、TPU被覆により、
水分や紫外線を遮蔽し、延線向けの誘電による絶縁破壊対策としました。
超高分子量ポリエチレンを高延伸した繊維は、軽く強い繊維ですが、軸方向の強度は
強いが、擦れには弱く、撚り構成の見直しで、この欠点を補完し、ワイヤロープが主体であった船舶の
係留策が軽量な本繊維ロープに転換され、安全で扱い易いと好評を得ています。
エポキシ樹脂は非晶性高分子であるが、架橋点が多く弾性率が高く、熱振動で分子が動くようになるTg:ガラス転移点を越えない範囲で、マトリクス樹脂として機能する。
軸方向に分子が揃い結晶性になると強度が高いが、非晶域が増すと強度は下がるので、高強度繊維の多くは、延伸加工により、強度を高めている。
吊橋のメインケーブルは100年以上、橋を支える重要部材です。
明石海峡大橋等、長スパンの吊橋では、使用するワイヤも長くなるため、
その強度のほとんどはワイヤ自重を支えるために用いられています。
ワイヤロープに使用される材料はC含有量が0.8%前後の炭素鋼です。
この材料を1000℃近くまで加熱後、約550℃まで急冷する
熱処理により、パーライト組織を形成させ、その後、伸線加工により、ファイバー
組織にし、高強度かつ靱性に富むワイヤを製造しています。
吊橋用のφ5~7㎜のワイヤ強度は1900年頃1,100MPa前後でしたが、1930年頃には
1,500MPaに、明石大橋の2000年頃には1,800MPaにまで高くなってきました。
近年では2,000MPaを超える高強度のワイヤが求められており、当社ではメーカーとの
材料開発及び特殊プロセスによる高強度化、高品質化に挑戦しています。
タイヤの補強材に使用されるスチールコードと太陽光発電用のシリコンウェハーを
シリコンの塊からスライスするソーワイヤを生産しています。
近年発売されるタイヤは、そのほとんどがエコタイヤです。
スチールコードはタイヤを軽くするために細く、細くてもタイヤが壊れないように
強くなる方向にあります。またソーワイヤは、一つの塊からたくさんの
ウェハーが取れるように細くなり続けています。
当社は鋼の強度を極限まで高め、かつ髪の毛より細く加工する
技術において世界最先端にあり、そうした細くて強いワイヤを撚り合わせて
直径1mm以下のケーブルに加工する技術を併せ持っています。
将来、自分で発電しながら遠くまで走る電気自動車が当たり前になるでしょう。
そんな時代に合ったタイヤや太陽電池の開発に、極限まで
細くて強いスチールコード、ソーワイヤが貢献できると考えています。
いくら強靭なワイヤロープといえども使用とともに疲労や腐食などにより劣化します。
当社ではワイヤロープを安全に使っていただくために磁気を用いた
非破壊検査による診断技術の研究を行っており、漏洩磁束法や全磁束法による
計測技術を商品化してきました。ロープテスタはエレベータやクレーンなどで使用される
ワイヤロープの断線を検出する診断機器で、全磁束法は橋梁用ケーブル等の
腐食を診断する方法として広く使用されています。
近年、インフラの劣化による事故が散見されており、有効な診断方法が求められています。
特にコンクリート構造物の劣化診断はグローバルな要求があり、
長年培ってきた磁気計測技術を応用し、早期実用化に向け、研究開発を行っています。
劣化診断の他、張力測定や疲労寿命予想等にも取り組んでいます。
エレベータやクレーン等に使用されるワイヤロープは大きな荷重下で曲げを受けます。
その際、ワイヤロープは単純な曲げ疲労だけでなく、ストランド同士の
接触による摩耗、腐食及び断線により損傷します。当社では有機/無機材料を複合させた
ハイブリッドロープを開発してきました。金属の強さと樹脂の優しさにより、
優れた特性を発揮します。その代表として、ロープ芯を樹脂材料により被覆して長寿命化したのが、
スーパーコートロープです。このロープは長年世界最高速エレベータを支えてきました。
また、ストランドの隙間に樹脂を充填し、接触状況を大幅に
軽減したスーパーストライプロープも好評であり、使用を拡大しています。
当社の研究開発に終わりはありません。さらに高強度、
長寿命化、さらには環境に優しく、安全なロープの研究開発を継続していきます。